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“Not everything that can be counted counts, and not everything that counts can be counted,”.
sociologist William Bruce Cameron, Informal Sociology (1963)
ドン・ノーマンの近著「より良い世界のためのデザイン」の中で、デザインの効果の測定方法に関する箇所で引用されているこの格言は、デジタルプロダクトをより良いものにすることに日々向き合っているデザイナーやプロダクトマネージャー、エンジニアにとって示唆的と思います。
ステークホルダーからの要求とプロダクトロードマップの優先度を整理するための各施策の見込み効果、A/Bテストにおけるパターン別のクリック率やコンバージョン率、プロダクトの利用状況を把握するための数字が並んだダッシュボード、できるだけ客観的に、合理的に判断をしようとすればするほど、こういった数字によった判断が重要だと感じられるようになります。さらには、組織で働く中では自身の業績評価、給与評価にこれらの数字が参照されることもあり、ますますこのような数字の重要性がデジタルプロダクトの開発で重視される傾向が強くなります。
デジタルプロダクトやデザイン自体の良し悪しは、売り上げなど数字に直結する部分はあるものの、あくまでそれは特徴の一側面だけを捉えたものと理解した上で、行動することが非常に重要と思います。カスタマーや利用者の感情的な反応、GenAIなどの新しいテクノロジーの登場による競争環境の変化、家族や公共の場など社会性の考慮、など計測定性的で、数値化が難しい領域も測定できる数値と同様に重要です。これらの観点を欠いた上で作られるデザインやプロダクトは、経済的には得なものになりえても、それ以外で所有や利用する理由がなくなり、結果として価格競争に追い込まれやすくなります。
ドン・ノーマンのこの著書では、この観点は地球環境の問題に提供し、GDPではなくSDGsに関連した指標を多角的に測定することが重要であることが主張されていますが、同じことがプロダクト開発においても積極的に取り組む余地があるのだと思います。ただ、その結果として日々の施策間の優先度付けや業績評価などへ複雑さを提供することが考えられ、この部分は評価のための新しい方法論を検討するのか、もしくは、評価自体の考え方の変化が必要になるのではないでしょうか。
今回紹介した本は、環境問題から複雑な問題へのデザイナーとしての対応などトピックは様々で、エッセイ的な内容です。新しい観点を発見するのにはとても良い書籍と思います。