Photo by NEW DATA SERVICES on Unsplash
以前から専門家認定をいただいているにもかかわらず、あまりこの組織について理解が進んでいなかったため、改めて自分なりにまとめてみました。
HCD-Netウェブサイト に以下のような説明があります。
人間中心設計推進機構(以下、HCD-Net)は、HCDに
関する学際的な知識を集め、産学を超えた人間尊重の英知
を束ね、HCD導入に関するさまざまな知識や方法を適切に
提供することで、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会
づくりに貢献します。
HCD-Netの総合パンフレット
「学際的な知識、産学を超えた」といった言い回しからもあるように、かなり学術的な書き方がされています。サイト上のナビゲーションにも「研究会・論文」が目立つ場所にあり、学術的なバックグラウンドが強い組織です。
イベントが頻繁に開催されていて、直近ですと、
- 医療・ヘルスケア領域
- ISO解説
- コンセプト評価とプロトタイピング
などのテーマで予定されています。理論から実践、また標準規格まで幅広く議論されています。
最近いくつかのイベントに久しぶりに参加してみて、大学の先生方の話も多く、理論としてどう整理されていくかという話を聞くことができて、個人的に実業に没頭している中で改めて自分の業務やサービス内容を広く振り返ることができました。業務に忙殺されているとなかなかこういった一歩引いた話に立ち返る機会はありませんので、良い振り返りの機会になりました。
学術寄りの話が多い印象の組織ですが、ビジネスに近い場面でデザインをしている立場からするとこんな点が良いのではと思います。
- HCDアウォードで、他社事例が見られる
- 認定制度で基本的な用語やプロセスを抑えることができる
1つ目の他社事例が見られるところは、毎年のHCDアウォードの最終ノミネート作品の提出資料で確認することができます。日々の業務が忙しいとなかなか他社の事例は把握できないですし、秘密保持の観点でも見ることは難しいですし、こういう工夫の仕方があるのか、などいろいろな気づきが得られます。
2つ目は認定制度で、認定制度自体はまだまだ複雑で難しいところはあるのですが、認定されるには全部で23のコンピタンスを把握している必要があり、まずこれを一通り理解することが求められます。それぞれのコンピタンスが製品開発やサービス改善の中でどういう位置づけにあるものなのか、そこで問われている課題が何で、自分の業務がどれに該当するのかを整理して書き出す必要があるため、受験にはとても時間がかかると思います。ただ、理論的にはこうなのだけど、と頭で理解はできていても、実際の業務でそれができているかどうかは別問題ですので、こういった内容を書き出すことで自分の能力や実績を振り返る場として良いのではと思います。
学術的なバックグランドを持つために、それが逆に難しさにつながっているのではないかと思います。
- 資料がもじもじしている。
- 専門用語が多い。
資料もそうですし、認定審査もそうなのですが、文字を多く使って解説されているため、これが新たにHCDを学びたいと思っている方に対してハードルになってしまっているのではないかと思います。
学術分野は専門用語をたくさん学んでそれを使いこなすことで新しい概念を作り出したり、観点を作り出せるので、そのアプローチ自体は一理あると思います。ただ、変化の早い時代に実業をメインに行っている立場からすると、理解に時間がかかりすぎるのは参入障壁になってしまい、ちょっともったいないかなと思う次第です。
- HCD-Netは学術的な組織のため、理解が難しいところもあるけれど、日常業務の振り返りや立ち位置を見直すのによい
- 他社事例からヒントを得たり、認定制度で自分の業務が理論とどう紐付いているのかを再確認できる