大きな組織で働いていると、なぜこの仕事を、この作業をする必要があるのか疑問に思ったことはありませんか? 階層構造がはっきりした組織では大きさに関係なく同様の疑問を感じることがあるかも知れません。
組織の中の情報伝達の不透明さは、従業員の不満につながることがあります。例えば、役員会が決めたことを、理由なく伝達された従業員が、上司の指示だからということで自身では理由が理解できていなくても、昇給のために、目標達成のためにと実施するといった場合です。
こういった意味の見いだせない作業というのは、指示を出した上司にとっても、それを実行する立場の人にとっても、生産的ではない結果をもたらします。
こういった状況の一つの解決策として、Radical Transparency(直訳: 抜本的な透明さ) という考え方があります。90年代にRay Dalioによって提唱された概念で、社内の誰が財務情報や役員会の議事録、会社の意思決定や方向性の議論に加われるようにする、という考え方です。
参考: How much ‘radical transparency’ in a workplace is too much?
https://www.bbc.com/worklife/article/20211116-how-much-radical-transparency-in-a-workplace-is-too-much
この記事では、Netflixなどの事例からどれくらいの透明さが適切なのかという解説があります。特定社員の解雇理由などを公にすると、そこに個人的な事情も入りますから、シェアされた側も決して気持ちの良いものではないという話があります。
Ray Dalioもこの点に触れていて、以下のような例外があるとのことです。
- プライベートや個人的な事情。例えば、個人の健康状況などコミュニティにふさわしくない情報
- 会社やクライアントの長期的な利益に対してリスクがあるもの。例えば、競合に渡ると自社の不利益になるノウハウや知財、監査情報等
- 共有する価値は低いが、共有すると邪魔になる情報。例えば、賠償金やメディアに歪曲されて伝えられ売る情報
- 透明性を上手に扱えないメンバーから透明性の剥奪と、場合によっては解雇
透明性を高めることで、組織としてチームとしての生産性は高まります。一方でどこまで共有することがふさわしいのか、その線引きもチームの中で議論できておけると、行き過ぎないと透明性を担保できるのではないでしょうか。