Photo by Niklas Ohlrogge on Unsplash

前回紹介したmazeはモデレータ無しのユーザ調査ツールでしたが、こちらのDovetailはモデレーター(インタビュワー)がいる調査の結果をまとめて保存しておくことに長けたツールです。
インタビューの録画データはもちろん28言語を対象に自動で文字起こしも可能(日本語は対象外)で、同時に記録したメモ書きや画像も貼り付けることが出来、それらをタグで管理してグルーピングできるなど、定性データを扱うための機能が揃っています。
ポストイットやMiroなどを使って同様の結果処理を行うことがありますが、これらのデータは直後のレポーティングでは活用価値が出てくるものの、インタビュー調査を2回、3回と重ねていく内に、前回の調査結果でも出てきたインサイトや課題があったことまでをまとめることはとても労力がいる話でした。Dovetailはこれを主にタグの機能を使って、各調査を通して同じテーマを拾い上げることが出来るようになっており、過去の調査結果を資産として再活用する手段になるという意味では、ユーザ調査の価値を高められるツールと思います。
いくつか気になった点がありました。
Table of Contents
何でもタグ管理、whiteboard上で視覚的にグルーピングすることも出来る
ビデオの書き起こしやメモにそれぞれタグをつけることが出来ます。ハイライトした部分をタグごとにまとめて表示。WhiteboardのようなUI上でソートしたり、タグごとに整理されたスプレッドシートで表示したり、いろいろな角度から結果を眺めてインサイトを探すことが出来ます。



文字起こしは日本語非対応だが、別途入稿は可能
英語はもちろんですが、合計で28言語の文字起こしに対応しています。ただ、残念ながら日本語には対応していないため、録画データ上で特定のシーンで表示するような対応が必要な場合、.vttファイルを入稿すれば他の言語と同じ対応が出来るとのことです。Microsoft Teamsのトランスクリプション機能を有効にすれば自動で取得できるようですが、このような手段で用意した.vttファイルをインタビューノートに追加することになります。
GDPR対応だが、日本の個人情報保護法にどこまで対応できているかどうか
サービスとしてGDPRに準拠していることはとてもありがたいですが、インタビューデータを保存する上で、日本の個人情報保護法に準拠できているのか、というのは確認が必要になると思います。筆者は法律に関して知識はありませんが、GDPRが個人情報保護法が完全な内包関係でも無い限り、この二つの法律の差分箇所がカバーできているのかという点を検証する必要が出てくると思います。
どちらも制度であるが故に、逐次改正が行われることを考慮すると、GDPRに準拠できていることはあくまで参考程度で、日本の個人情報保護法と照らし合わせて、万が一含まれるかも知れない個人情報を法律に準拠した形で管理することが出来るのか、ということが本格的に導入する際には必要になってくると思います。
まとめ
定性ユーザ調査の数を重ねた経験がある身からするとこのようなツールがあると、組織の中での調査の価値を最大化できる意味ではとても有意義なツールだと思います。一方で、日本語の対応、日本の法律への対応など、いわゆるローカライズの観点で検討する箇所がいくつもありそうなため、組織内に導入するときにはこれらの観点を見極めた上での導入が必要になりそうです。
特に最後の法務観点が大きなブロッカーになりそうです。一つ一つ確認を重ねていけばクリアできると思いますが、現場の調査担当者一人の力ではなかなか時間がかかる検証になるため、結局すでに社内にある近しいことが出来るツール類、Notion, Google Drive, Confluenceといったすでにそこにある一般的な知識管理ツールが試用されやすい傾向が生まれるのではと思います。